| カスタマーレビュー |
「出がらし」ではない刺激的啓蒙書 |
| 2008/04/02 3人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
唯幻史観(本書では史的唯幻論)によって近代社会を鮮やかに切って見せた「ものぐさ精神分析」の続編。本書はより身近なトピックスを対象にしており筆致も自由奔放で発想も自在。「全ては幻想である」、「人間の本能は壊れている」と言う信念が全編を貫いている。決して「出がらし」ではない。
文明を"病"と断ずる事は別に目新しくないが、"伝染病"とは言い得て妙。「死への恐怖」は人間以外の動物にもある事は自明で、これを種々の社会制度の唯一の要因と決め付けるのは流石に無理だろう。「史的唯物論批判」は本書の核心で、平凡だが首骨できる点が多い。日本的"諸行無常"の歴史観の延長上に自らの「史的唯幻論」があると嘆いているが、自然な流れだろう。「アメリカの精神分析」、「集団と狂気」、「守る」は現代の混迷を予見しているようで鋭い。動物園から"覇権幻想"に話を展開する辺りは著者の真骨頂で、「マニアについて」、「流行について」等と同様、軽い話題から深遠な考証に論理を飛躍させる手法が読む者を魅了すると共に、書き手の余裕を感じさせる。次章では「性的唯幻論」を"女性の肉体の商品化"をベースにして論じるが、論理的には受容出来ても、理が勝ち過ぎている気がする。性の問題は難しい。「近親相姦のタブー」を社会成立の前提条件とするアイデアは卓抜。「しつけの問題」、「価値について」の二編は秀逸な論考で、ここだけでも本書を読む価値がある。作家論はやや平凡か。
著者の「唯幻論」は国家、社会、制度と言った機構に巧く機能するが、"個"にも適用できるのには正直驚いた。ツボに嵌った時の刺激は強烈で、既存の常識に飽き足らない方への格好の啓蒙書。 |
文庫版プロザック |
| 2005/09/07 5人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| この本を読んでから様々な局面で精神的な免疫が出来た気がする。初めて読んだときも私の脳が求めている言葉が次々と出てきた。そればかりか街で少しおかしな人を見ても気が滅入る様なことがなくなった。ああこの人は人格を共同化出来なかったんだなと思うようになってきた。生活していくうちに別な効果も期待され、実に楽しみである。 |
社会の構造を知るための必読書 |
| 2004/09/27 7人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| 子供に「素直になりなさい」などと言える親は、子供の心を知らない無神経な親である。はたして彼らは子供が本当に素直になった場合のことを考えた上で言っているのであろうか? 子供というものは、親子関係をスムースに保つため、親に気に入られるため、かなり気を使い、気をまわし、不満や疑いを押し殺しているものなのである。とにかく、子供がのびのびと自由に振る舞い、そしてそれが親の気に入ることと一致しているといったうまい話が転がっていないことだけは確かである。(「子の心親知らず」の要約) |
繰り返し読むに値する本 |
| 2004/03/19 8人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| 印象に残ったのは、アメリカ建国時に100万はいたインディアンが20万になった大虐殺の経験の欺瞞が現在のアメリカの戦争フェティシズムという行為の理由であるという「アメリカを精神分析する」 唯物論は黒い白馬、のように形容矛盾であるという「史的唯物論批判」 ユングの本能心理学的考えへの厳しい批判「ユングの元型について」 子供の頃父親と同一視に失敗した者が同性愛者になる、同性愛者は男らしさに挫折した者なので、彼らは普通の女性よりも男らしさを賛美する傾向にある。 三島由紀夫の精神ははじめから死んでいた、この世に生きているという実在感の欠如に彼の創作、その他の活動を説くカギがある、などです 「ものぐさ精神分析」を読んですぐ買いました。岸田秀の本はこれで2冊目です。この本を読んで三島由紀夫がかわいそうでかわいそうでしばらく落ち込んでしまった覚えがあります。他にも「アメリカを精神分析する」「シニシズムの破綻」「役割としての性」に強いショック(岸田秀の本は感銘とか感動とかよりもショック、という表現が自分にはふさわしいと思う)をうけました |
二番煎じ |
| 2004/01/10 18人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
この本は、「ものぐさ精神分析」の続本である。 したがって、「ものぐさ精神分析」を読まれていない方には、まず、そちらをお薦めする。著者独特の興味深い文章を楽しむことができるであろう。この「続ものぐさ精神分析」は、もとは、「二番煎じ ものぐさ精神分析」と「出がらし ものぐさ精神分析」の2冊である。タイトルが示すとおり、本当に、二番煎じであり、出がらしである。つまり、最初の「ものぐさ精神分析」と同じ思想を、言い方を変えただけの論文が多い。これは著者も、あとがきで認めているところである。 したがって、残念ながら、最初に「ものぐさ精神分析」を読んだときに感じる独特感・新鮮感はうすい。「また同じことを言っている」と感じるほうが多い。 しかし、逆にいうと、著者の考えを繰り返し読むことにより、理解度が高まるとも言えるので、著者の考えを深めて理解していきたい方には一読をお薦めしたい。 |