| カスタマーレビュー |
天皇利用の代償 |
| 2007/10/17 3人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| 1942年生まれの日本中世史研究者が、天皇制存続の理由を問おうとして1993年に刊行した、近世統一権力成立期の朝幕関係を具体的に記述した本。院政期に権威・権力の頂点を迎えた天皇家は、大局的には承久の乱以降それらを段階的に喪失してゆき、南北朝合一期には、足利義満による皇位簒奪計画が成功の一歩手前まで達していた。しかしその後、交戦権の承認や叙任権の行使によって、戦国期には天皇の権威は徐々に回復し、信長ですら譲位強要には失敗した(28頁)。秀吉は長久手の敗戦で武力による東国征服(征夷大将軍位)を一時的に諦め、天皇権威に頼った天下統一を目指し、武家関白となったが、その結果彼は天皇の権威を絶えず引き合いに出さざるを得なくなった(律令制的な「王政復古」)。他方江戸幕府は公武の弁別に尽力し、天皇の権威の表出を嫌って、直奏禁止、家康の神格化(東照大権現)、紫衣事件、行幸制限等を通じて天皇封じ込め政策をとったが、官位による大名・寺社の序列化は廃棄しえず(権現号・将軍職も勅許による)、将軍が外交権を行使しつつ日本国王を自称しないことに見られるように、礼式世界の「奥の院」としての天皇権威を否定する論理を、ついに見出し得なかった。そのことを、著者は「俄の御譲位」事件の経緯において確認すると共に、明治維新が王政復古として現れる前提を成す事実として重視している。史料的制約ゆえか民衆の幕府・朝廷観が見えにくい点、長久手の戦いや女帝騒動のような個別の史実の歴史的意義を過大評価しているようにも見える点は気になるが、戦国期天皇の意外な権威の高さ、征夷大将軍職の意味、秀吉による王政復古・遷都計画など、興味深い史実を知ることができる。 |
権力者はなぜ天皇にならなかったのか、の疑問に答える本 |
| 2005/06/14 11人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| (著者の本に初めてふれる人を意識してなのでしょうか)冒頭に中世以来の王権をめぐる事件を解説し、頭が柔らかくなったところで秀吉と家康と皇室をめぐる問題をあざやかに解説しています。今谷氏の本はいつも具体例を豊富に出すので、素人にもわかりやすく、つい何冊も買ってしまう魔力を秘めています。 |
要点を駆け足で説明 |
| 2005/06/09 6人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| およそ600年くらいの間の重要事件・重要人物を、ピックアップするかたちで本にしているので歴史の流れとして理解しやすい。 武家にとっての必要性が天皇制を存続させた面を指摘されたのは卓見だと思いますが、そうした合理的な理由だけで朝幕並立はこれだけ長い間存続したのか? 利用する側(天皇を担ぐ側)から見たの天皇権威だけでなく、敵対する側から見た天皇権威について。天皇制を否定するほどの権威を、何故歴代の武家は持てなかったのか?など。この本を読むことにより、さらに歴史への興味が増した気がします。 |
今谷天皇学の総決算的存在 |
| 2003/08/03 17人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| 日本で天皇がなぜ続いてきたのかという課題を追求してきた今谷氏の総決算的な本、これまで著者は、足利義満の皇位簒奪未遂事件と覇王織田信長の天皇との対立と敗北を「室町の王権」「信長と天皇」で考察してきたが、本書はそれに続く二人の天下人、豊臣秀吉と徳川家康の天皇の取り扱いと、江戸時代における幕府と朝廷の駆け引きを追っている。確信犯的「尊王家」秀吉が天皇の権威を笠に着て最高権力者として自由に振舞うありさま、逆に天皇を武家秩序を脅かす危険な存在として封じ込めながら、結局天皇という存在を超克できなかった徳川家康と江戸幕府の対応を中心的に扱っている。上に掲げた二冊とともに三点セットで読むと良いと思う。 |
秀吉が将軍になれなかったわけ |
| 2002/10/01 10人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| 武家の力が強化されてからも,天皇権威が滅びることが無かったわけを明らかにする本である。 著者は天皇権威のメカニズムを明らかにする過程で,秀吉が将軍になれなかったわけについても触れている。秀吉は源氏の流れを汲まないから,という俗説は否定され,真の理由が明らかにされる。歴史ファンは必読である。 本書では,序章に後水尾帝の退位という大事件を持ってきて,それから天皇権威のメカニズムを明らかにし,終りに後水尾帝退位事件の顛末を記すという構成をとっている。読者を引き込む手法としては最高の出来だろう。 |