| カスタマーレビュー |
読み手にクラッシック音楽の素養があれば星は五つかも |
| 2008/02/27 0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
主人公が作家であれ福祉関係の官吏であれ、はたまた音楽家であれ、篠田作品には業界の内幕の具体的な金額がバンバン出てきて、読んでいるこっちがちょっと心配になってきてしまう。後で誰かに怒られるんじゃないかと思って。
半分を過ぎた辺りからミステリーっぽくなりますが、そういう意味では既に察しがついていて面白くならない。主人公の瑞恵の生き方、愛しい男と相思相愛なのにすんなりと胸に飛び込めないもどかしさ、自分の生活がパトロンによって成り立つことを甘受せざるを得ない哀しさ。それを味わうことが出来るなら、本書は良品です。
私にクラッシックの素養があれば、曲の調べが浮かんできたなら、星を五つ点けたかも。 |
外国作品至上主義 |
| 2007/10/09 0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
一流半のバイオリニスト・瑞恵は,「エギディウス・クロッツ」(1760年ころ,ミッテンヴァルトで作られたバイオリン)だと思って満足して演奏していたものが,実は日本人が最近作ったバイオリンであると知るや,「騙された」「アマチュアの練習用ならともかく,こんな寄せ集めの,楽器とも呼べないようなものを……」と怒り出す。こうした「外国作品至上主義」は,瑞恵だけのものではなく,バイオリニストには一般的な傾向とのことであるが……にしても,愛用のグァルネリが6000万円でも「破格」であったり,音大でもない学生であっても「まともな」バイオリンとして400万円程度は出さなければならない,など,ちょっとあの世界の金銭感覚には驚いてしまった。
ともあれ,そうした「外国作品至上主義」という風潮を背景にして,事件は起こるのであるが……篠田節子らしく,ストーリー展開・文章がうまく,グイグイと物語世界に引き込まれてしまった。
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こんな世界もあるのでしょうが |
| 2006/09/10 6人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
参考までに、マエストロとは、芸術の大家、巨匠の意味です。
美貌のヴァイオリニスト・神野瑞恵。使っている名器グァルネリの調子が悪くなり、楽器商・マイヤー商会の柄沢の勧めで称号なきマイスターと呼ばれる保坂を訪ねる。そこで素性はわからないが、すばらしい音色を奏でるヴァイオリンに出会い―。
現代社会において成功する音楽家とは、名器と呼ばれる楽器の本当の価値とは、考えさせられる一冊だと思いますが、されど楽器なのでしょうが、何百万という価値観が、現実離れしていて・・・。
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表面的な事と本質的な事 |
| 2006/04/07 10人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
本書は音楽の専門的な内容が随所に盛り込まれている。それは著者の他著作の「カノン」とは趣がかなり異なる。カノンは音楽が作品全体を支配するが、本書に比べれば音楽はどちらかと言えば作品の小道具に過ぎず、主題は別のところにある。対して本書は音楽がより深く全体を統合する。前半は物語の大きな進展も無く、音楽にまつわるかなり専門的な話題が続き、一体著者は何を描こうとしているのか?と疑問に思ってしまう。しかし、そこで本書を置いてはいけない。後半からの展開で本書の輪郭が明確になってくる。つまり何が表面的な事で何が本質的な事なのかという区別に明瞭な線が引かれる。そして結末は現実を超越した内容で「名実共に」幕を閉じるのが深く印象に残る。
この作品は一つの境地だと言える。推理小説の様でありながら殺人は行われない。しかし殺人ではなく現実が人を死に追いやる。登場人物の心理描写も緻密で、多くの内容が明瞭に描かれている。ただ本書は文庫330ページ程度の作品であり、この倍程度のページ数を使って、もっと深い部分まで描き切って欲しかったという感想も持つ。一つの境地を確立する門出の作品としては、少々の物足りなさも感じた。
読者としての戸惑いは少しあるが、この路線の作品の新鮮さに敬意を表したい。 |
傑作です。 |
| 2006/03/21 7人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 |
| この作品のスケールはこじんまりとしているとはいえ、すべての登場人物の性格がくどくなくしかし奥深く表現されており、また不自然な飛躍も無く、完成度の極めて高い小説だと思いました。感動もあります。篠田さんの作品の中では、一番良いと思っています。 |